~幾野の道の遠ければ~ 月海が日々堕落してゆく日記
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魔法のステージ ファンシーララ
2009-05-12 Tue 04:37
もう10年も昔のアニメになりますが、私は「ファンシーララ」というアニメが大好きだったりします。
いわゆる魔法少女物のアニメですし、一般的に子ども向けの作品でもありますので、いい歳して。。
と思ってしまうかもしれませんが、私がこのアニメが好きな理由は、それなりにあるのです。

一般に、魔法少女の物語における魔法は、三つの目的で使用されます。
一つ目は、「戦闘」や「収集」等、特定の目的のために使用される魔法。
二つ目は、夢や理想を実現させるための魔法。
三つ目が、寓話としての、アンチテーゼとしての魔法です。

「戦闘」や「収集」を目的として使用する魔法とは、魔法を使用して悪と戦ったり、身体能力を向上させたりという、魔法が目的のためのツールとして描かれている物です。作品としては、「リリカルなのは」や「CCさくら」「コレクター・ユイ」などがあります。

夢や理想を実現するための魔法は、魔法を使って夢だったアイドルになる。困っている人を助ける。という、魔法が人のためになると描かれるもので、作品としては、「クリーミィマミ」「ひみつのアッコちゃん」「どれみ」など、日曜の朝にやってそうな少女向けの作品があげられます。

三つ目の、アンチテーゼとしての魔法。これは、「魔法」を「科学技術」や「文明」と置き換えるとわかるかもしれません。ドラえもんやジブリ作品でよく使われる手法で、科学技術や魔法に頼りすぎてしまったせいで、人間が逆にしっぺ返しを受けてしまうという、教訓を与えるための技法です。
「ファンシーララ」は、このアンチテーゼとしての魔法というテーマで描かれています。

「ファンシーララ」は、一応は、魔法を使って歌手になるという、魔法少女物のアニメです。しかし、実際には非常にリアルな物語として、作品は描かれています。
両親は共働きだし、アイドルとしていきなり人気になるわけでもなく、下積み生活から描かれます。地方巡業、閑散とした路上ライブ、人の集まらないサイン会、最終的にトップアイドルにもなりませんし、それに、給料を振り込むための口座とか、契約の更新とか、どれもみほ自身が非常に前向きな性格のため、暗い印象は受けませんが、子供向けとは思えない現実的な話が描かれています。

それに、主人公である小学三年生のみほは、そもそも「歌手やアイドルになりたかったわけではない」というのが、「夢や理想を実現するための魔法」の作品と根本的に異なります。
みほは、将来は漫画家か、母親と同じマスコミの仕事に就きたいと言っていました。

みほが使用できる魔法は、「身体を6年だけ成長させること」だけです。厳密には他にもありますが、どれも「大人になること」を補助的に支えるものですので、実質的に「成長」する魔法だけと考えて問題ありません。
この能力は、普通の「魔法少女物」からしてみれば、恐ろしく限定的な魔法です。「大人になる」にしても、小さなうちから大人用の服を着込んでから成長の魔法を使用しなければならないという徹底振り。みほに「面倒」とまで言わせています。魔法で衣装まで変わってしまう他の作品とは違うところですね。
魔法を使って日常と芸能界を両立するというのは、「クリーミィマミ」でありましたが、「マミ」は魔法であらゆるフォローが可能だったのに対し、「ララ」は成長の魔法しか使えません。つまり、成長してしまってからは、魔法の補助が一切受けられず、一般の人と変わらない生活を強いられるのです(しかも中身は小学生、コナンとは逆です)

「ファンシーララ」は魔法少女物でありながら、実際に魔法が使われるのは変身するワンシーンのみで、(魔法が登場しない話すらよくある)、作品のほとんどの部分は小学生である「みほの日常」か、大人の「ララの日常」が語られることになります。
もちろん、魔法で事件を解決したり、人を助けたりということは一切出てきません。
魔法物でありながら、魔法が存在しない物語なのです。

みほは、小学生とは思えないしっかりした女の子です。
それ故に、みほが直面する事件は、現実にありえる非常にリアルなものです。しかも、他の魔法少女物のように、魔法に頼り、魔法で解決することが一切できません。そして、成長後のみほ(ララ)は、否応にも大人としての行動を求められ、誰の手助けも得られずに問題に立ち向かわなければならないのです。
このリアルさが、他の「成長型魔法少女」とは違う、「ファンシーララ」の魅力なのかもしれません。

そして、最終話近くになって、みほは急に魔法の力を失います。ファーストコンサートを成功させ、さあこれからという時に、何の前触れもなく急にです。
これまでにも、目的の達成や、魔法の必要性を感じなくなったための、「魔法の返上」の結果、魔法が使えなくなるというパターンの魔法少女物はたくさんありました。

みほに魔法を与えたと思われる人物は、こう言います。

「魔法が重荷になってしまう子、魔法に頼りきって失敗する子、魔法なんかいらないと思って捨ててしまう子、色々だ」

しかし、みほはいずれにも該当しません。「魔法がいらない」と思ったことは一度もありませんでした。しかも、魔法を失った後の唯一の相談相手だったマスコットの小動物キャラも消失し、みほは全ての問題を一人で背負うことになったのです。

みほは小学生にはありえないくらい、責任が強い子でした。

「別に、歌手になりたくてララになったわけじゃないし、あんな記事書かれて、こんな辛い思いして、何も良いことないもん」

しかし、「ララ」を必要としてくれる人がいる。その思いだけで、みほはコンサートに出る決心をしたのでした。

「でも、みんながララが来るのを待ってくれている」

魔法を使ってアイドルになったのも、自分の夢のためではなく、周囲の期待に応えていったら、アイドルになっていた、というのが現実でした。
しかし、魔法を奪われ、結果としてララを投げ出すことになり、周囲に迷惑をかけたということが、責任感の強いみほには、ララが駆け出しのまま消えてしまったことが、大きな負い目になってしまったのでした。

ララがいなくなり、芸能関係の人々はパニックに陥ります。「ララが仕事を投げ出した」とまで言う人も現れます。
そんな中、ララに変身できなくなったみほは、本来の姿のまま、自分のせいで迷惑をかけたと思い、関係者全てに頭を下げに行きます。
皆は、みほ=ララと知りませんから、その姿を不思議に思ったり、気がつかなかったりしますが、その姿が非常に痛々しいのです。

そしてラストシーン、唯一みほ=ララと見破った人物から、

「笑ってごらん、みほ あと何年かしたら、君は本物のララになれるんだよ」

と言われて、物語は終わります。
ララと見破られたことの驚き、ララだとわかってくれた安堵感、ララとしての責任感など、
このときの、様々な感情、複雑な心境を含んだみほの微笑みは、物凄く印象に残っています。
また、「みほちゃん」ではなく、「みほ」と呼び捨てにしていることも、みほをララ=大人として見ている細かい演出になっています。

小学三年生の女の子にとって、これは非常に重い十字架でした。
魔法に出会ってしまったが故に、自分の意志と関係ないところで、人生が決定づけられてしまったのです。

みほは、歌手になりたかったわけではありません。ほんの2話前で本人が言っています。漫画家になる、マスコミ関係の仕事をする、という夢を持っていたはずです。
しかし、「魔法」を使って、人々に「ララ」という夢を見せてしまった結果、「将来ララになって責任を果たす」という運命を背負ってしまったのです。コードギアスで、ゼロという夢を見せたのなら、実現してみせろ、というのと同じです。しかも、小学三年生の女の子に。

魔法はみほに、「人にできない体験をする」代償として、「大切なものを失ってしまう」ことを経験させました。
夢を与えるはずの魔法が、自分の夢を失う結果となったのです。
しかも、魔法の影響は、それだけではなく、「みほが自分の力でララになる」という呪縛まで与えてしまった。

もちろん、将来「ララ」がアイドルになるということは、みほの可能性の一つに過ぎません。
本来の夢であった漫画家かマスコミの仕事を目指すかもしれませんし、違う職業に憧れるかもしれません。
これからは、みほ次第でなんにでもなれる。魔法で見た夢すらも、自分の力で続きを見ることができる。
将来について悩んでいたみほは、自分の未来は幾つもの道に別れ、伸びていること、
そのことを、魔法はみほに教えたかったのかもしれません。

「ファンシーララ」は、魔法少女物で最も残酷なエンディングを迎えた物語なのかもしれません。
こんなに難しいお話なので、本来のターゲット層(みほと同世代)には受け入れられませんでした。
アイドルとして華々しく活躍する物語でもない、内面の心情を詳細に描く「ララ」よりも、「プリキュア」のように、パッと見の派手さとか、爽快な活劇の方が楽しいのでしょうね。勧善懲悪のバトル物はその典型です。

逆に、リアルな設定や登場人物の心理を描いていく様子は、大人が楽しめるアニメなんじゃないかなと思いました。
私は「ファンシーララ」が大好きです。



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